『暮しの手帖』の創刊号から第2世紀53号まで、30年間にわたって153冊の表紙を手がけてきたのは花森安治でした。
創刊号から100号まで(1948〜1969年)を『暮しの手帖』1世紀と呼んでいます。
1世紀は、43号までが手描きのイラストで、44号からは表紙を写真撮影に変えています。その後は表紙は写真とイラスト両方が使われています。
★装画表紙
1〜43号、57号、93〜95号、97〜99号
★写真表紙
46〜56号、58号〜92号、96号、100号
初期は水彩画
表紙に使われた画材は、水彩、色鉛筆、オイルパステル、グワッシュ、ポスターカラーなど、技法もコラージュやスクラッチなど、なんでも試しています。
また、表紙の原画は、あとでタイトルや号数を入れるためのスペースを考えた構図になっています。
創刊号
創刊号 1948年9月
創刊号 直線裁ちのデザイン(デザイン:花森安治 着る人:大橋鎮子)
創刊号 自分で作れるアクセサリ
美しいものは、いつの世でも
お金やヒマとは関係がない
みがかれた感覚と、
まいにちの暮しへの、しっかりとした眼と、そして絶えず努力する手だけが、
一番うつくしいものを、いつも作り上げる
(イラストと文:花森安治)
1世紀2号 1949年1月
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1世紀3号 1949年4月
千葉千代吉の「西洋料理入門」連載がスタートします。
(第3号から第13号まで連載)
1世紀4号 1949年7月
平塚らいてう「ゴマじるこの作り方」
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1世紀5号 1949年10月
「この雑誌を出してから、やっと一年たちました・・・第一号は赤字でした。第二号も赤字でした。今だから申せるのですが、そのために昨年の暮れは、私たち、お餅をつくことも出来ませんでした。どうぞ、つぶれないで下さい、というお手紙を、あんなに毎日いただくのでなかったら、どんなに私たちが意地を張っても、やはり第三号は出せなかったことでしょう」(第5号あとがき)
1世紀6号 1949年12月
創刊号〜6号まで、原画はすべて紙に水彩で、食器や家具など、ひとつ、ひとつが丹念に描きこまれています。
印刷について
「写真のページの印刷ひとつにしても、よく専門の方でもグラビアだろうとおっしゃいますが、ふつうの写真版印刷でございます。戦前からの古いガタガタの機械では、とても刷れないというのを、無理にがんばり通して、一号を刷りました。失敗でございました。二号を刷り、三号を刷りました。もっと何とか、という思いで、しろうとの私たちまで機械の傍で、夜おそくまで一緒にいく晩もすごしました。」
「刷る方たちが、まるで自分の本のようにもう一どインクを変えてみよう、この方法でやって見ようと、やって下さいます。そして四号、五号と少しずつよくなって来たのが、どんなにうれしかったでしょう。」
「したいことがあったら何でも言ってほしいと、印刷所でみんなが言って下さるのです。道を歩いていて本屋があると入って、この雑誌のことを聞いて見るんだよ、とおっしゃる工員さんもございます。
・・・決して大きな印刷所ではありませんが、日本で一番大きい印刷所でも、これだけの愛情をもって仕事をしていただけようとは考えられないほどでございます。この号から、新しく活字の形をかえ、大きさを変えることができたのも、そのおかげでございます。」(5号 あとがきより)
昭和二十四年十二月一日初版
暮しの手帖 第六号
本文及写真印刷 青山印刷株式会社
表紙及び平版印刷 有恒社
60年以上保管されていた雑誌ですが、コンディションがまちまちで、第7号から数冊は表紙の下がかじられてしまっていて、イラストが完全でなくて御免なさい。
1世紀7号 1950年4月
水彩に加えて色鉛筆で彩色された表紙。
一冊の雑誌が何人ものひとに読まれる時代、表紙がぼろぼろになってしまうという読者からの手紙で、この号から表紙にかぶせるカバーをつけた。
「誰にでも必ず出来るホットケーキ」
merimaa88.hatenablog.com
1世紀8号 1950年7月
1世紀9号 1950年10月
「これは、ひとからよく言われることで、自分でいうのは、すこし変なのですが、もしかして、この雑誌に、ほんのすこしでもなにか清潔な感じがあるとすれば、それはこの雑誌に、一つも広告がのっていないことではないかと思います。」(第9号 あとがき)
1世紀10号 1950年12月
水彩・色鉛筆・鉛筆で描かれたこの表紙は、私は好きな表紙のひとつです。
左下などずいぶん派手に喰われてしまっていますが、その部分はランプののった赤い机と、本棚には緑、白、ブルーの雑誌です。よく見ると『VOGUE』や『ハウス・キーピング』などの雑誌があります。
何ともいえぬ暖かみのある色合いで、壁の灰色などはむずかしい色ですが、いい色です。
ジャパニーズ・シックという組み合わせなのに、イタリア的な色彩も感じる表紙。
★すべての表紙の原画は、こちらの本で見れます。