台所の「ふきん」をあなどるなかれ 1960年

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昭和のふきん

昭和の時代、我が家でもこの「日東紡のふきん」を使っていました。

ふきんのヘリの3色を記憶しています。 

でも、時代を経て、いつからか使わなくなって忘れていました。

新しい製品に目をひかれたり、安いマイクロファイバー製を使い捨てるとか、イージーに何も考えずにふきんを選んでいたある日・・・

テーブルを拭いたあとに残ったケバに、さすがに何かが違うと思い、何のへんてつもない、このふきんを再び手にしました。 

「・・・・・!?」

驚いたと同時に、少なからずショックでした。

何というか、使いよさ、快適さに価値観というものが、ひっくり返った瞬間でした。

そして、昭和35年『暮しの手帖』第54号のふきんの記事を探して、読んでみたのです。




ある朝突然に・・・

台所のふきんの研究は、『暮しの手帖』らしい、こんなスタートです。


私たちは、たいへん奇妙で、ぶしつけなことをいたしました。
東京都内のあちらこちらから、見たところ中流とおもわれる家を50軒えらんで、いきなりお訪ねしたのです。
時刻は10時から11時ごろ、朝の片づけがひとまずすんだころでした。そして、その朝お使いになったふきんを、2枚ずつ頂けないかと、あつかましいことをお願いしたのです。


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突撃リポーターみたいですが、訪問を受けた家は、ふきんを『暮しの手帖』に提供してくれて、スタッフはまだ濡れたままのふきんを研究所に持ち帰った。

こうして集まった100枚のふきんを、それぞれ3つに切って、100枚組を3組作った。

①その1組は、すぐに神奈川の衛生研究所へ。ここで大腸菌やバイキンを調べる。
②あとの1組は、そのまま室内に吊るして乾かした。
③最後の1組は、電気センタク機で粉せっけんで洗ってから、晴れた戸外で乾かした。

そして、結果はというと・・・

①その朝使って、濡れたままのふきん
バイキンだらけだった。100枚中62枚に大腸菌、10平方センチ当り雑菌が5千以上いたものだけで46枚もあった。

②そのまま室内で十分に乾かしたもの
大腸菌のついているふきんは36枚。まだ3枚に1枚は大腸菌がいる。

③石けんで洗って日光で乾かしたふきん。
100枚のふきんのうち大腸菌のいるのは1枚もなかった!

いまさらながら、お日様のちからにバンザイ!  

暮しの手帖も、ふきんの上手な使い方の手がかりを、つかむことができたのです。


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たった1枚の小さな布でありながら・・・

ふきんは台所になくてはならないもの。

でも、食器や、食べ物に絶えずさわるものだから、バイキンがついていては困る・・・

とにかく、こんなにバイキンがいたのでびっくりした当時の『暮しの手帖』は、まったく新しい目で、ふきんを見直してみます。

まず、「ふく」という仕事。茶わんや皿、ナベやヤカン、まな板や包丁、テーブル、魚や野菜といった食材、料理する手もふく・・・

その他にも、かぶせる、包む、つかむ、敷く、こす・・・

この小さな布は、よく毎日、毎日、こんな酷使に耐えているものだと気づきます。


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よいふきんは、どんなもの?

それならば、ふきんは、どんなものがよいのだろう・・・?

①水をよく吸う 
②洗って丈夫 
③しなやか 
④ケバがつかない 
⑤乾きやすい 


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その当時、家庭で使っていたのは、ほとんどが純綿の、商店からもらうような薄い手ぬぐいや、さらしのふきん、タオルなど。 

『暮しの手帳』は、大橋鎮子さんがアメリカ視察旅行の際に、現地で買い集めたアメリカ製のふきんも比較して、ふきんをテスト。

吸水性、耐久性のテストでは、実に3200枚の西洋皿をふいています。(16枚ふくたびに、4分間センタク機で洗う。) 




新しいふきんを試作

「アメリカに負けないふきんを作りませんか?」

テストの結果では、日本のふきんは十分満足できるものでなく、かといってアメリカ製は手に入らない。 

アメリカで作れるものが、日本で作れないことはない。今まで良いふきんがなかったのは、ふきんのことを見落としていただけ。

編集部は、日東紡の研究室に共同研究を申し入れます。


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日東紡は、まず混紡率と織り方の研究を始め、予備テスト用に6種の生地を織った。

これを『暮しの手帖』がいろいろな角度からテスト、本テストにとりかかった。

日東紡が織った生地は42種類。

そして、吸水性、丈夫さ、ちぢみ具合のテストで4種の生地が残り、さらに、10人のベテラン主婦に、半年のあいだ使い具合を記録してもらうテストも行い、2種まで絞った。

ふきんとして大切な「大きさ」

ふく、かぶせる、包む、つかむ、敷くために、当時のふきんは小さすぎたので、現在の42cm ×71cmのたっぷりサイズに決定。

それが、昭和35年、日東紡と暮しの手帖社の共同研究として売り出され、今も売られている超ロングセラーのふきん。


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キッチンに「ふきんかけ」はいらない

そして、ここが一番たいせつなところではないかと思います。

記事を抜粋してみると、

「ある朝突然に、50軒の台所から、いま使っているフキンを集めて、バイキンを調べたら、大腸菌など、びっくりするくらい沢山ついていた・・・というところから、この研究の報告がはじまりました。台所には、あの ”ふきんかけ” はいらない、というところで、この報告は終ります。」

なぜ、”ふきんかけ” は必要ないの? 

当時のアンケート調査でも、7割の家は、ふきんをせっけんで洗っています。

だけど、日光にあててふきんを乾かす家は1割もなかった。日の当たらない、台所の "ふきんかけ” で乾かしていた。 

しかし、「外で、お日さまにあてて乾かしたら、バイキンはいなくなった」ことが、テストで分かった。 

私自身のふきんへの価値観も、そこからスタートして、変わっていったのです。

顔や手をふくタオルなどは、石けんで洗って、外で日にあてて乾かすのに、こんなにも酷使されてるフキンは、なぜ外で乾かさないのか・・・? 

ということです。

まとめ

上手なふきんの使い方は、

①十分に乾いていないものを使わないこと

②たっぷりとした大きさで地厚なものを使う

③まとめて石けんできれいにセンタクする

④かならず日光にあてて十分に乾かすこと

⑤4人家族で、10枚以上のふきんを用意すること

⑥使ったふきんをまとめておく場所を工夫すること


特に大切なのは、①、③、④でしょうか。

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お日さまに干して、パリッと乾いたまっしろなふきんが、キッチンにあるのがこんなに気持ちよい、能率のよいものだと思わなかった・・・

私の実感です。


日東紡 ふきん 3P 300006

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  • 出版社/メーカー: イシミズ
  • メディア: ホーム&キッチン
 

 

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日東紡の新しいふきん「とと姉ちゃん」バージョン 5枚入

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  • 出版社/メーカー: ニットーボー新潟株式会社
  • メディア: ホーム&キッチン
 

 

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