「台所のふきん」こぼれ話  暮しの手帖より

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イラスト:花森安治

もっとも読者からの反響があった記事

日東紡と暮しの手帖社が共同開発した、拭きやすく、ケバが付かず、早く乾くふきん。

昭和から今に至る、ロングセラー商品。

このふきんを開発するための、テスト記事が『暮しの手帖』に掲載されたのは、昭和35年の第54号。

この記事は、創刊以来、もっとも読者からの反響があったのだといいます。

第55号あとがきには、次のように書かれています。

「これまで、54冊の暮しの手帖を作ってきて、こんどほど、たくさんのお手紙をいただいたのは、はじめてでした。しかも、その大部分があの『ふきんの研究』についてのご感想だったのです。しかも、ほとんど全部が、まるで筆をそろえたように、あれはよかった、とおっしゃって下さったのです。こんなことも、創刊以来はじめてのことでした。」


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今までずっと、台所の「ふきん掛け」で乾かしていた「ふきん」は、調べてみたら実は大腸菌だらけだった・・・

ということを、昭和35年、日本中がはじめて知った、センセーショナルなテスト結果だったのです。

「・・・あの ”ふきんの研究” の結果は、やっている私たちにとってさえ、一つの大きなショックでした。たとえば、ふきんについているバイキンのことなど、恥かしながら、まさかあんなだとは思ってもいなかったのです。それだけに、はじめてあれをごらんになった方は、きっと私たち以上にびっくりされたにちがいありません。」



パリと東京

ちょうど、ふきんのテスト記事と同じ頃、石井好子さんの『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』の連載が始まります。

そこから、当時のフランスの主婦の洗たく方法が分かります。

「・・・食事に使うテーブルクロスやナフキンは、一週に一度大きなタライの中で煮るのだった。赤ちゃんのうぶ湯ぐらい使わせられるほど大きい洗たくタライによごれものを入れ、石けんの粉をふりかけて、上からお湯をひたひたになるまでそそいで火にかけ、ぐつぐつ中火で20分ぐらい煮る。」

「ときどき長い棒で上からつついたり、よごれものをひっくり返したりして、それがすむと水洗いするのだが、不思議なほど真っ白に、きれいによごれがおちていた。」


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古今東西、「熱湯で煮沸する」殺菌の知恵は同じです。

ただし、パリのマダムは「電気せんたく機なんてとんでもない。生地をいためるから絶対おことわりです」と言っていて、電気せんたく機に殺到した日本の主婦とは違っていた様子。

また、「アイロン」は『暮しの手帖』が電気製品として初めて商品テストをしたアイテムですが、木綿を使うことの多かった生活の必需品であり、アイロン熱で殺菌するという点も、昔からの知恵だったのでしょう。


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「ふきん」はアメリカ旅行から

昭和33年4月、大橋鎭子さんはアメリカ国務省から「マスコミで活躍している人に今のアメリカを見てほしい」という招待を受けて渡米します。 

花森さんとアメリカ行きの打ち合わせをしてるとき、たまたま編集室にかかっていたのが、昔ながらの木綿のふきん・・・

「そうだ、ふきんを新しい目で見直して、その手始めにアメリカの家庭のふきんを見てこよう」


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台所の空気のように、昔からあったふきん

そこで、ボストン、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコなどのデパートで、大橋さんはふきんを買い集め、後日に生地の分析やテストに使用。日東紡ふきんの誕生につながっていきます。

アメリカ滞在は4ヶ月に及び、グッドハウスキーピング社の商品テスト室や、ヴォーグのファッション撮影を見学したり、日本の暮しのよさを再発見したりと、この後の誌面にも多くの影響をもたらしていきます。 


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ふきんとタワシでスポンジいらず

ところで、ふきんだけでなく、食器を洗う「スポンジ」の大腸菌も気になるところ。

スポンジも何個か用意して、日光に当てて乾かし、ローテーションで使えばよいのですが、スポンジを使わない方法もあります。

引き出しの中にある、出番のない薄手のふきん・・・これで食器を洗うと、少ない洗剤できれいに洗えます。スポンジと洗剤はペアというか、洗剤を使って泡立てないとスポンジってあまり役に立ちません。 

食器洗い用のふきんも、一日使ったら石けんで洗って(洗濯機でOK)、日光で乾かします。 

それと、棕櫚(しゅろ)でできている「たわし」を加えれば、野菜洗いから、鍋の焦げつきまでカバーできます。 




昔ながらの棕櫚(しゅろ)でできている、手作りの「たわし」 

一般的な「たわし」は、パームヤシの繊維を束ねたもの。

棕櫚(しゅろ)のたわしは、コシが強いのに柔らかく、野菜を洗う、なべを洗う、コップを洗う・・・使いやすさが格段に違っていて驚きます。

結局のところ、「ふきん」や「たわし」毎日使うものだからこそ、良質なものを選んだほうが、仕事も楽と実感します。

幸せは白いふきん

片岡嘉男さんの小説のタイトルみたいですが、日東紡のふきんは、何に似ているかといえば、白いTシャツ。

気兼ねなくバンバン使えて、日に当ててよく乾かしたTシャツと同じような気持ちよさ。

暮しの手帖社と日東紡の共同研究で誕生したふきんは、発売から50年のロングセラー商品。

独特のパナマ織りを採用。レーヨン混で吸水性がよく、丈夫でしなやか、ケバの付かないふきん。

フチの色は、赤・緑・黄の3種類と、真っ白のバージョンがあります。

☆日東紡の新しいふきん
サイズ:42cm × 71cm の大判サイズ
素材:綿65%、レーヨン35%


日東紡 ふきん 3P 300006

日東紡 ふきん 3P 300006

  • 出版社/メーカー: イシミズ
  • メディア: ホーム&キッチン