昭和26年6月、第12号。
まだ、雑誌のタイトルが『美しい暮しの手帖』だった頃、
唯一のカラーページは、4ページの刺しゅうだけでした。
ひかえめに、「ぬいとりの花 武井孝子」と見出しがあるほかには、何も文章はなくて、刺しゅうの写真だけです。
私はただ眺めているのが大好きなページです。
クリームイエローの布地、刺しゅうの伸びやかさは、原っぱという懐かしい場所を思いだします。
終戦から6年。雑誌に掲載されたエッセイを読むと、まだ日々の暮しにひどく困窮しています。
だけど、なんと軽妙で、明るい色彩、伸びやかさ。
洗いざらした木綿のような清潔感。
武井孝子さんが、どういった経歴の方なのか分からないのですが、昭和26年の『週刊朝日 9/16号』の表紙も武井孝子さんの刺しゅう作品で、同じ方ではないかと思います。