着物を活用するために
昭和21年、銀座から『スタイルブック 1946 夏』が創刊されます。
『暮しの手帖』が創刊される2年前のことです。
「いろいろ考えると、日本の着物はなかなかいいものだ。戦争でふだん着るものには不自由しているが、まだ、昔からの着物を持っている人も多い。その着物を活用することを紹介したい。それには、ぼくが長年考えていた《直線裁ちの服》をまずやっていこう。」(「暮しの手帖」とわたし)
という花森さんの提案で、直線裁ちはスタート。
「タンスの中にしまってある着物で美しい服を」
「洋裁を勉強しなくても誰にでも作れる」
これがキャッチフレーズでした。
「暮しの手帖」創刊号
型紙なしで作れる 直線裁ちのデザイン
デザイン 花森安治
写真 松本政利 林重男
裁つひと 大橋鎮子
縫う人 中野家子
着るひと 大橋鎮子
紙面1ページを使って、大きく紹介されているのが「紺ガスリの服」
紺ガスリを使って、思い切って和装のシルエットを取り入れてみたワンピース。
エリは和服と同じ白い半エリ。(ただしエリ明きは胸の中途止まり)
肩揚げを取り、袖はタスキをかけた感じに絞り、ペプラムはぐるっと、お端折(おはしょり)の感じ。前あきのスカートにはエリ先もつけた。
(ペプラム:ジャケットやブラウスの,ウエストから下の部分。)
もうひとつメインで紹介されているのが、七分袖のワンピース
「赤と黄の格子縞」
黄色地に赤い格子のガラ紡。
エリは白いキャラコ。
袖付けはもちろん直線だが、袖の動きを助けるために、和服と同じ八つ口を開けてある。
エリも袖も自由にデザインを工夫して
『暮しの手帖』創刊号には、写真での紹介ページのほか、大橋鎮子さんの「直線裁ち」という記事で作り方を載せています。
といっても、型紙なしで図面だけ。即興というか、その人の体のサイズに合わせて自由に思うままに工夫して作り上げる感じです。
「直線裁ちは、どういうものなのだろう・・・?」
ということが分かりやすい部分を抜粋してみます。
★裁ち方は、エリのデザインのほかは、どこもみんな和服と同じように直線で裁ってあります。
だからもう型紙はいりません、夏物なら二時間、秋から冬のものでも四時間もあったら出来上がります、どんないそがしい毎日を送っている人でも一晩あったら一着出来上がりましょう。
ただ美しい、というだけでなく、簡単に裁てる、早く作れるということも、この「直線裁ち」の大きなよさの一つなのです。
★浴衣さえ縫える人なら、誰にでも出来ます、手縫いでていねいに縫い上げると、ミシンで縫うよりかえって出来上がりがふっくりゆくのは、不思議なくらいです。
★秋から冬の服はエリのほかにも、いろいろ袖も工夫してみます。
袖口をつぼめたり、七分袖にしたり、袖口を広くあけたり、カフスを使ったり、デザインを工夫してみると、今までの服に出なかった味が出てきます。
(「直線裁ち」大橋鎮子より)
他の作品はこちら
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