新学期になって、子供に机を買ってやりたいと思った筆者。
しかし、買えば子供の机といっても大人のものとあまり変わらないし、そのわりに、いいものは少ない。
あれこれ考えた末、リンゴ箱を買ってきて工夫することにした。
掲載は、昭和25年発行の『暮しの手帖』第7号。
リンゴ箱の机とミカン箱の椅子
『暮しの手帖』の1号〜10号ぐらいまでは、何でも作ろうという記事が多い。
椅子、テーブル、棚、傘やふすまの貼りかえ、靴、帽子、のれん、カーテン…
間に合わせであろうと何であろうと、戦後の家も物資も不足した時代では、なければ暮しに差し支えてしまう。
それにしても、リンゴ箱とミカン箱、ベニア2枚で、ここまで雰囲気のある子供の机を作ってしまうのに驚く。
机の左右はリンゴ箱をそのまま使って仕切り板をつけたもの。
フタも付いている。(もともとリンゴ箱に付いていたフタ)
おもちゃや本、野球のグローブなど子供の持ち物が入っている。
机の上の板は、枠を作ってベニアを二枚貼り合わせたもの。
椅子はみかん箱を利用した。
右は机の上板と、足台。机の丈が低くなればこれを下におく。
子供は両親が作ってくれたといって大喜びで、友だちをつれてきては自慢していたという机。
筆者(制作者)の鳥羽正さんは建築家。
『暮しの手帖』2号にも「たてぐ いろいろ」という記事を書いている。
日本家屋に多かった玄関の引違い戸や、障子・ふすま、窓などを直したいときに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめたもの。
今となっては、貴重な資料になるだろうし、まだ100ページもない薄い雑誌一冊に、本当に役に立つ記事が、ムダなくレイアウトされているのが『暮しの手帖』だった。